トルコ語翻訳家のイスタンブル暮らし
トルコ・イスタンブール生活22年目、反抗期真っ盛り上の娘、生まれてからずっと反抗期の下の娘をかかえる働く母の日々の出来事や感じたことを綴ります。
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トルコ生活22年目の二人子持ちの翻訳家・通訳の日常生活と旅行の記録です。トルコ民家研究がライフワークです。



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私が考えるSoma炭鉱事故の本当の原因
今回の事故
―事故が過失で起こるものだとすればこれは厳密には
「事故」ではなく「人災」ですが―
の原因は、源流をさかのぼれば、政府の私営化政策にあると思います。

トルコはオスマン朝時代に工業が全くといっていいほどなかったので、
共和国になったのと同時に工業化を推進せねばならず、
アタテュルクが様々な分野の産業を国営企業として起こしました。
1986年から始まったトルコの民営化政策で、
これまでにほとんどの国営工場が閉鎖されました。
共和国誕生後50年あまりを経て
国営企業が政府の重荷になってきたことと、
民間企業の産業が育ってきたことが理由に挙げられます。
最近10年では、鉄鋼業や今回の事故の舞台となった
鉱物などのエネルギー産業も、
民間企業からサービスや製品を入札で
購入する形をとっています。

これが今回の事故を招いたとも言えます。
入札の条件がひどいのです。
炭鉱についていうと、
たとえばXXトンの埋蔵量がある炭鉱のうち、Xトンを5年で生産せよ。

先進国の炭鉱でなぜ事故が起こらないかというと、
大型の設備投資をし、人力に頼る部分を極力少なくしているからです。
安全基準を順守するにもお金がかかります。
何年もかかってもとをとり、
その後利益を上げるという長期的な投資をします。

しかしトルコ政府の石炭買い上げ機関である
トルコ石炭経営局の条件は、
短期間でたくさんの石炭を採ってくれというものです。
しかも埋蔵量を全部掘り出す権利もくれません。
それでは企業は大型投資ができず、
小手先だけの投資で利益をあげなくてはならなくなります。
つまり設備ではなく、人力を大量に投入する、
産業革命時代のような生産形態です。
短期間に人力で大量の生産をするため、
たとえばこのSomaの炭鉱では
800人くらいのキャパの場所に
3000人を投入していたらしいです。
しかも、採れた石炭の買い上げ価格も、
国が直接炭鉱経営をしていたころよりはるかに安い価格です。

今回の事故で助かった労働者のうち、
勇気ある方々がマスコミの取材に応じていました。
経営者は「仲介業者はいない」と言っていましたが、
実際このSOMA炭鉱で働いている人は全員、
業者でさえない個人の仲介人に搾取されているとのことでした。
しかもこの仲介人たちは互いに競争させられていて、
一番生産量が多かった仲介人にはボーナスがでるので、
労働者たちを休む暇もなく働かせ、
蔭では
「Hadi Hadici」‐「さっさとやれ屋」とでも訳しましょうか、
と呼ばれていたそうです。
経営者にとってはよいシステムですが、
労働者にとっては奴隷のような状況です。
労働者の管理は仲介人まかせなので、
仕事を始めたときの研修もありません。
このような危険な仕事をするのに、
何の教育もない。

soma2
補償がもらえなくなるのでは、失業するのでは、という恐れから
口を開かない人がほとんどといいますが、この方は勇気を出して
テレビの討論番組に出ています。
自分は行かなかったけれど、他の炭鉱では大型バスで
AKPのミーティングに連れていかれた労働者がいたということです。


職業安全も考えられていない。
9年前に仕事を始めた人は、
9年前に配給された酸素マスクを
一回も点検してもらったことがないと言っていました。
しかもたいしたことがないのに使うと、
マスクの代金を給料から差し引かれるというので、
炭鉱の中にいて事故の規模がわからなかった人で、
つけなかった人もいたそうです。

一酸化炭素のセンサーも規則通りなかったそうだし。
トルコはILO(International Labour Organization)が
1995年に出した採鉱場の安全協定に署名していない
数少ない国のうちのひとつです。
この協定では採鉱場に「rescue chamber」の設置を義務づけています。
ガスが発生したり、天井が崩れて外部に出られなくなったときに、
長期間過ごせるシェルターです。
数年前にこの部屋のおかげでチリの炭鉱事故で60日以上たって
助かった人たちがいました。
トルコには740 もの炭鉱があるそうですが、
このRescue Chamberがあるのは4か所しかないそうです。
事故を起こしたSoma石炭生産会社は、
Somaホールディングの傘下にある業界最大手。
現在代表取締役をはじめとした8人が逮捕されましたが、
事故から5日も経ってからです。
その間に証拠隠滅していないか心配です。
逮捕されてから代表取締役と工場長が、
お互いに罪をなすりつけあっているといいます。

でも、政府に値切られている分を、
職業安全に使うお金から削っていた彼らの行為の根源には、
政府の政策があります。
しかも、年に数回行われる政府の監査も、
監査人は炭鉱の中は点検せず、
書類しか見ないそうです。
労働組合の長も、
経営者に取り込まれているそう。
昨日から助かった労働者たちが、
仲介人制度の撤廃を求めて座り込み抗議を始めました。
ここまで企業の横暴を見過ごしてきた政府にも
大きな責任があることは言うまでもないことです。

しかし、この事故をAKPの非難材料に使っている人々にも
言いたいことがあります。
確かに事故はAKPの政権時代に置きましたが、
その布石はもっと前に敷かれていたんです。
AKPが政権を取る前は、連立政権ばかりで
制度の整備に手が回らなかったのかもしれません。
AKPも経済成長にばかり焦点を当てた政策をとったので、
数字ばかりに気を取られて
職業安全のことを考えていませんでした。
しかしこのことをAKPを蹴落とす材料だけに使わないでほしい。
そんなことにエネルギーを割くなら、
生き残った人たち、
他の炭鉱でひどい条件で働かされている人たちの
救済に割いてほしいと思います。
そうすることが、亡くなった方々への弔いになると思います。

今回のこの「人災」を機に、
トルコはILOの協定に署名し、
エネルギー政策の転換を図ってほしいです。


soma3
ご兄弟の遺体が包まれていた毛布を、
洗って新月社に返したご遺族に、
新月社の方々も涙を隠せませんでした。
この毛布は博物館で展示されるそう。

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